Column
Our Roots

 27 March, 2017     China townに連れてって / SWS
 
 2月後半、OGは二泊五日という変則日程で台湾を旅して来た。往きは午後9時35分成田発、帰国時は午前6時5分成田着の便だとそのような日程になるのだ。何か特別な目的があった訳ではない。LCCの昨夏のキャンペーンで“成田〜台北¥2,980!”というのがあり、そんなに安いのなら買っておこうかと思ったのと、台湾に興味はあったが行ったことはなかったし、久しぶりに一人旅でもしてみようかと考えたのが理由である。消費税、諸経費、オプション込みでも片道5,000円程度で一回の飲み代とさほど変わらず、海外旅行としては格安だ。
 赤、黄、緑、オレンジといった原色で彩られた台湾の街は、そのダイナミズムが魅力だ。台北や高雄には其処彼処に失われた昭和40年代の日本がある。歩道に屋台のようにせり出し湯気の立ち上る麺類や飯類、惣菜の店とそこに集う飾らない人々、漂う香辛料の独特な香り。ラッシュアワーの車道に溢れ、信号が変わると一斉に走り出す何十台もの原付バイクの轟音。間口が広く天井は高いが薄暗いガレージの、雑然と積み上げられた古いエンジンやパーツ、部品の中で、油で汚れたランニングやTシャツ姿でおもいおもいの作業をする自動車修理工と彼らが響かせるグラインダーやハンマーの金属音。店先の椅子に腰掛け何をするでもなく通りを行き交う人を眺める老人。OGが小学校の低学年の頃に見た街の風景とどこか似ている。
 
 
 11月のライブで演奏した“China townに連れてって”はN.Y.のチャイナタウンをイメージして作られた曲である。OGがN.Y.にいた当時の決して小綺麗とはいえないチャイナタウンの、中国系移民と街を訪れる多様な人々が生み出すプリミティブなエネルギーを、R&Bの名曲“Midnight hour”や“Knock on wood”のエッセンスを取り入れて表現した。世界のいたる所に華僑の築いた街、チャイナタウンがあるが、華やかさと清潔さという点で横浜の中華街は勝っておりOGお気に入りの店も何件かある。“桑港(サンフランシスコ)のチャイナタウン”は、渡辺はま子の1950年のヒット曲(第一回NHK紅白歌合戦のトリで歌われた)のタイトルにもなっているが、N.Y.からの帰国時とサッカーW杯米国大会の際に訪れたことがある。坂道に沿った少し寂れた感じのする街並みに風情があり、思い起こすと中学生の時に伯父のレコードで聴いたキャッチ―な歌詞とメロディーのこの曲が、OGがチャイナタウンに興味を持つきっかけだったような気がする。本家中国の上海、外灘(バンド)は英米共同租界時代に建てられたネオバロックや新古典主義様式のビルディングと21世紀の高層建築が黄浦江を挟んで建ち並び、河を渡ればタイムトリップで百年前と現代の最先端を同時に体験することができる。歴史の波に揉まれながらもしたたかに生き延び増殖し続けるパワーと、アジアの原風景へのノスタルジーが、チャイナタウンにOGが惹かれる理由なのかもしれない。
 
(OG)
 
 


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