Column
Our Roots


 27 November,2012    48 crash / Suzi Quatro
 
 ロック愛好者なら誰しも、自分をロックの道へと導いた最初の一曲との忘れがたい出会いがあると思う。ロック第一世代ならそれはElvisであったり、第二世代ならBeatlesだったりが王道というところだが、生活のあちこちにロックが普通に顔をのぞかせ始めた第三世代(我々はこのあたりの世代であろう)以降となると、ミュージシャンも曲も百花繚乱、ロックファンの数だけ様々な出会いの物語も存在する。 
 
 OGとロックの出会いもBeatlesではない。正確にいうとBeatlesがロックだとは認識していなっかたというのが正解だ。というのも大学生だった従兄の影響で中一の頃から聴き始めたBeatlesは、Let it beであったりPlease please meであったりI want to hold your handであったり、流れるような英語の歌詞のメロディとビートとハーモニーが耳に心地よく“ああいい曲だな”とか“あれはBeatlesだったんだ”というように、知らないうちにどこかで耳にしていたそうした楽曲は、違和感なく体の中に自然に沁みこんで来た。あえてジャンル分けするならばそれはロックというよりは“ポップス”であった。
 では“ロックとは何か?”この命題は常に我々の前にありその定義は無数に存在するが、“イッタイ、コレハ何ナンダ…”という「一瞬思考停止に陥るような衝撃を伴う出会い」という項目がロックファンにとってのロックの定義には必ず含まれてくることだろう。
 
そういった意味でのOGとロックの出会いとなったのが、黒いレザーのジャンプスーツを身にまとい、小柄な身体にベースを抱え、3人の男たちをバックに従えた、当時イギリスと日本で人気絶頂の女性ロックシンガーSuzi Quatroの”48 crash”であった。キーワードは“重低音”。冒頭のシンプルで力強い2小節のドラムのリフに続き、これまたシンプルこのうえないディストーションの効いたギターの低音弦とベースがユニゾンで重なる、掻き鳴らされ徐々に音数を増してゆくギターにSuziの金切り声一歩手前のハイパーアクティヴなシャウトが絡みつくようにしてイントロから歌へとなだれ込み、ドラムのビートを前面に押し出したストレート且つダイナミックなサウンドの上で、エレピが軽やかに舞う。
この曲はOGの音楽に対する概念を大きく変えた。つまり音楽はただ“聴くもの”ではなく、身体で“感じるもの”であるということを気づかせてくれたのだ。。
これには当時のオーディオブームの最中、従兄自慢の25万円のオーディオセットが大きく貢献してくれた。腰の丈まであるスピーカーから流れだす大音響の48 crashが、思考回路を停止させたまま重低音の振動に身を任せるそれまでに味わったことのない快感と解放感をOGに教えてくれたのだ。ヘレン・ケラーが手の平に書かれた”water”の意味を悟るが如く、OGがロックの意味を悟った瞬間だった。。
 
 現在ではよりヘビーな重低音に特化したバンドがいくつもあり、それらと比較するとあの当時のサウンドは必ずしもヘビーだとはいえないが、それでも48 crashのカッコよさは今でも変わらない。一度知ったら二度とは戻れない重低音の快楽を教えてくれた“禁断の一曲”である
 
(OG)
 
 
 
 


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