「日没を背に種まく人」に圧倒される前に、ゴッホの生涯に触れる機会があった。2016年に制作された映画「Loving Vincent〜ゴッホ最後の手紙」を今年1月に観た。狂気の天才画家の漠然としたイメージしかなかったゴッホの生涯を、125名の画家がゴッホタッチの油絵で表現したアニメーションである。
彼の数少ない友人であるアルルの郵便配達人ジョゼフ・ルーランから最後の手紙を届けるように頼まれた息子アルマンがゴッホの生涯と謎の死を辿っていく。ゴッホの数々の名画が風景に溶け込む美しい映画である。精神を病みながら芸術と格闘したゴッホの壮絶な生涯のひとつの解釈として、彼の作品と共に心に深く残る映画だった。
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"Sings Soul Ballads"
清志郎が亡くなって2年半後にリリースされたバラード集だ。
1年7カ月の闘病生活を経て2008年武道館での完全復活祭後に、本人の構想によるアルバムタイトルと選曲リスト書き記されていたものがベースとなっている。もしかすると何らかの予感のようなものがあったのかもしれない。ジャケットのアートワークには彼の油絵が採用された。力強い筆触と感覚的な色使いが印象的なそのジャケットは、音楽と絵画に関する愛情が滲み出ている。穏やかで個性的なラブソングが集められたそのアルバムジャケットを手にしながら、向日葵の前にたたずむ忌野清志郎に思いをはせた2018年の命日だった。
『僕は絵の中で、音楽のように何か慰めになることを語りたい。僕は、あの何かしら永遠なるものをもって、男や女を描きたい。かつては光輪がその象徴であった、そして、今、僕達が、光の輝きそのものや色彩の震えによって表わそうとしている、あの永遠なるものをもって。』
(ゴッホからテオへの書簡531 1888年9月)
(MG)
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