Column
Our Roots

 11 September, 2016    Let it be & Get back / The Beatles
 
 前回担当したコラムで高校時代のバンド1980 Street walkerについて触れたので、今回はOGが中学卒業直前、予餞会で初めて組んだバンド“ワニガワバンド”の話をしようと思う。
 バンド名の由来は、当時、高級品の代名詞“鰐皮”のバンド(ベルト)から取られた。“バンド組もうぜ”という話になった時に、女子から名前はどうするのと訊かれ、“バンドといえば、鰐皮バンド”と受け狙いで答えたのが、そのままバンド名になった。
メンバーはアコギに、体格がよく成績優秀、先生からの覚えもよいが少々切れやすい歯医者の息子ハマチ(中2からギターを始め、手がでかく力も強いのでバレーコードFも難なくクリアーしていた)。エレキギターにバドミントン部でダブルス県大会優勝、ミック・ジャガーばりの唇がトレードマークのミチノ(ローコードのストロークしかできない)。後にStreet walker高3の文化祭で、他校からのサポートでベースを弾いてくれたイソノがドラム(音楽室から借りてきたスネアのみ)。そしてOGがK.S.Hofnerのバイオリンベース(予選会の数週間前にみんなでお茶の水、下倉楽器に買いに行った。値切りに値切って3万円5千円程で購入したと思うが、担当の店員がレジで同僚たちから“お前マジかよ”と渋い顔をされていたのを覚えている。本当に安くしてくれたのだと今更ながら感謝しております)。
高校入試が終わり、鉄筋4階建て歯科医院兼自宅のハマチの家でリハをしてみたものの、アンプを通していないためほとんど演奏の体を成さない(アンプを買う余裕は無かったので、学校のPAや借り物で済ます予定だった)。おまけに素人同然のミチノのギターとOGのベースでさすがに不安を感じた4人は、地元の建設会社の社長令嬢でエレクトーンの名手、男子からの人気も高い、同じクラスのしーちゃんを口説いてバンドに参加してもらうことにした。
予餞会で過去にエレキの演奏は無かったため当初難色を示す教師もいたが、全国的な科学コンクールで賞を受賞し全校生徒の前で表彰されたハマチと、英語スピーチコンクールに出場経験のあるしーちゃんの信用で、我々は体育館のステージに立つこととなった。演目は3曲。一曲目は“Let it be”、ハマチがリードボーカルをとり、しーちゃんのキーボードが威力を発揮した。2曲目、元々歌はそれ程でもないミチノのボーカルに、客席からオイオイとツッコミが入った印象が強すぎて曲目が何であったか記憶が定かでないが、“All my loving”の簡略バージョン(もちろん3連無し)だった気がする。最後にOGがボーカルの “Get back”。シンプルなベースラインと、器用でリズム感のいいイソノの軽快なスネアに乗り、左足でテンポを刻みながら一番の歌詞を歌いだすと、どこからともなく手拍子が起こり、それは会場全体へと広がっていった。大きな拍手を受けてステージを降りると、強面の生活指導の先生が“お前、プレスリーみたいだな”と感心してくれた。“ビートルズなんだけどね”と心の中で思いながらも、率直な評価に自然と笑みがこぼれた。
 
 
 Beatlesは古びることがなく聴くたびに新たな発見がある。今年も彼らの新作ドキュメンタリー映画“Eight days a week”が公開される。中学時代は、ちょうどベストアルバム“Rock’n’roll music” 発売キャンペーンのリバイバルブームと重なったこともあり、Beatlesの音楽がまるで血液のように日々我々の身体の中を駆けめぐっていて、洋楽チャートの様々な曲を取り込んでいく時も、判断基準としてそこにBeatlesの楽曲が存在していた。これはBeatlesよりハードだとか、ポップだとか、全く違うタイプの音楽だとか。OGが初回のコラムでRod Stewartの“Get back”を取り上げたが、根底にあるのは言うまでもなくBeatlesだし、ワニガワバンド最初で最後のステージで、中学生活への惜別と新たな世界への旅立ちの想いとともに、仲間や後輩たち、先生方に捧げたのも、成長期の心と身体に溶け込み一体化したBeatlesの“Let it be”であり“Get back”であった。
 
(OG)


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