Column
Our Roots

 23 July, 2016    空へ / カルメン・マキ&OZ
 
 先月のMGに引き続き、今回のOGのコラムでも高校時代の盟友ペッツについて書こうと思う。そもそもOGとMGを最初に引き逢わせたのがペッツだ。OGはMGともペッツとも同じクラスになったことはないが、高1の時に体育が一緒だったのでペッツの存在は知っていた。入学して間もない陸上の授業で、水面を滑るがごとく低くなめらかなフォームとリズムでハードルを飛び越え、駆け抜けていく男がいた。ウォ、カッコいいな。それがペッツだった。高2の文化祭にOGが独りでエントリーした時、ギターの弾き語りにもかかわらず、演奏予定の曲目が“Johnny B Goode”や“Get back”といったRock’n’rollであることに興味を惹かれたペッツが、Bansheeというバンドで一緒にやらないかと声をかけてきた。スタジオ練習でOGはペッツにギタリストのMGを紹介される。それがOGとMGの最初の出会いであり、現在のSWSへと続くストーリーの第一歩であった。
 
 文化祭が終わった後、ボーカルOG、ギターMG、ドラムス ペッツ、の3人が中心となり新バンド1980 Streetwalkerが結成され、3年時の公民館ライブ、文化祭、予餞会、卒業後のオールディーズでのライブ等の活動を行うが、ペッツが役者の道を志し、中学校の演劇鑑賞会で全国を回る劇団への入団のために旅立つこととなり、その後サポートメンバーを加えてライブを行うものの、バンドは事実上活動停止状態となってしまう。ペッツのドラムは非常にタイトでノリがよい。当時のテープを聴きなおしてみると、演奏自体は荒々しいがペッツのリズムが正確でフィルインが的確なので、バンド全体に一体感とグルーヴがあり、ペッツのリズムがStreetwalkerサウンドの柱であることがわかる。
 
 高校時代のペッツは常に何か熱中できる面白いものを捜していて、それが結果的にオーガナイザー的な役割を果たすことに繋がっていったように思える。ペッツといえばカルメン・マキ&OZがまず頭に浮かぶ。MGのコラムにもあったように、正統派のロックボーカリストとして歌も上手いペッツは、オールディーズでのライブでは、彼らのロックナンバー“とりあえずロックンロール”でリードボーカルをとっている。Streetwalkerでの3年の文化祭では代表曲“空へ”をやる予定だったが、コードが上がっていく部分のタイミングが最後のリハでも合わせきれず、直前に取りやめた経緯がある。
 
 
  来る日も 来る日も ロックンロール
  踊り疲れたとは言わない
  汽車に揺られ ここまで来たが
  まだ旅は始まったばかり
  いつまでも いつまでも
  走り続けるロックンロールバンド Oh yeah
 
  どこへ行きたいと訊かれたら
  どこへでも行くと答える
  ガガガガ 学校行くよりも
  タタタタタタタ 旅に出よう
  どこまでも どこまでも
  走り続けるロックンロールバンド Oh yeah
 
  いつだったか 何のために
  歌っているのか考えた
  考えてもわからないので
  こうしてここに来たんだ
  だから とりあえず とりあえず
  走り続けるロックンロールバンド Oh yeah
 
カルメン・マキ&OZ“とりあえずロックンロール”の歌詞である。
 
 
  ぼんやりと浮かんだ 雲のように 
  彷徨いたいと思った頃から
  遠く囁くおまえの声が いつも私を支えた
  いつかはきっと おまえのように 
  飛んでみせるよ 私も
 
こちらは“空へ”の一節だ。
 
 
 音楽には大きな力があり、その後の人生の指針となるような曲に出会うことがある。日本の女性ロックボーカリストの草分けでもあるカルメン・マキの、いまだに輝きを失わないこれらの楽曲には、ペッツの思い切りのよい、ストイックな生き方がオーバーラップする。彼の役者生活は数年後、主宰が交通事故で亡くなり劇団が解散したことで突然幕を閉じる。その時には既に新たに夢中になれる何かを模索していたらしく、ペッツがそれ以上役者の道を追求することはなかった。地元に戻りその後大学を卒業し一般企業に就職したはずだが、それぞれが自分の道を歩み、連絡が疎遠になり始めた時期なので、この辺りの記憶は非常に曖昧だ。20代の半ばを最後に音信不通のまま今に至るというわけだが、そもそもOG自身が、MGが接点とならなければ音信不通になりかねない身なので、ペッツからみれば音信不通なのはOGのほうだろう。ペッツの教えてくれたカルメン・マキの楽曲はOGの心にも深く刻まれている。今もペッツは新たな目標に向かって走り続けているのだろうか。 ペッツとともに過ごした日々は、様々なエピソードに彩られていてとてもここでは紹介しきれないが、その一つ一つに思いをはせることのできる、同じ時間を共有した友をもつことは、それだけで幸せなことである。
 


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