Column
Our Roots

 30 November, 2016    Jockey Jockey / SWS (1980 Street Walker)
 
 “君は馬より美しい”
OGの考える、女性に対する最高のほめ言葉である。もっとも言われた女性の反応は推して知るべしなので、実際に使ったことはないが…。要はサラブレッドの鍛え抜かれた筋肉と磨きをかけられ輝く毛艶、緑の芝を人馬一体となって疾風のように駆け抜ける姿は、それほどまでも力強く美しいということだ。
小4の冬から小5の春にかけて、社会現象となったアイドルホース、“ハイセイコー”の登場以来、OGは多くのレースをTVで競馬場で観てきた。大学生の時には、七冠馬となるシンボリルドルフとビゼンニシキの皐月賞での叩き合いを中山の直線間近で、一ヶ月半後のダービーはOGの競馬の師匠である伯父の伝手で、ゴール前を見渡せる東京競馬場の馬主席から、ルドルフが不世出の名馬として歴史に名を刻む瞬間を目撃した。その後もスターホースとその子供たち、それを支えるホースマン、勝者と敗者が演じる様々なターフのドラマを見てきたが、過去を振り返る時、その当時の出来事とともに、同時期に活躍していた馬たちとレースの記憶がOGの想い出を彩ってくれていることに気づく。今もG1レースは録画して必ず見ている。
 
 
 先日の年末ライブでSWSが最後に演奏したJockey2 (Jockey Jockey)は、OGが大学1,2年の頃に書かれ、MGとともにスタジオでリハもしたが、当時のバンド1980 Street walkerのメンバーが定まらなかったこともあり、結局ステージで演奏されることはなかった曲だ。日本のロックシーンで主流のタテのりのロックナンバーではなく、うねるようなノリをもつStonesタイプのロックンロールをイメージした。その後長いこと封印されたままだったが、数年前の野音で30年という歳月を経てアコギバージョンとして日の目を見ることとなり、今回よりロックな姿で甦った。
作る作品には聴く者を揺さぶるうえで、選ぶ言葉や描く世界に自分の好みや世界観が色濃く反映される。サラブレッド&ジョッキー、男&女、目覚めのシャワー&コーヒー、Rock&roll、S&M的な視点。今、分析してみると、Jockey Jockeyにはこれらとともに、未来へと進む楽観性が感じられ、ちょっとばかりファンタジーの香りもする。バブルの全盛の時代の気分が作品世界に大きく影響を与えているのかもしれない。そういった時代特性の割に、この曲が歌っていて古臭さを感じさせないのは、根底に“女に尻を叩かれて進む男たち”という、恐妻家とされるソクラテスの昔から変わらない男と女の縮図があるからかもしれない。犯罪の陰に女あり、ルパン三世は峰不二子に唆されて危ない橋を渡り、女たちは鞭の捌きも鮮やかに男たちを誰よりも速く、どこまでも高く走らせる。3分前後の凝縮された時間の中に、時にそうした生きる上での真理を感じさせてくれることも、競馬と音楽がOGを魅了し続ける理由の一つなのだろう。
 
(OG)

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